英語力を上げる⇒スコアが上がる

 TOEICのスコアを上げるためには、何が必要でしょうか? まず、試験形式に慣れて、自分の実力を最大限に発揮できるようにすべきなのは言うまでもありません。しかし、そうすることで得られるのは、せいぜい2桁の得点アップにとどまるでしょう。さらに上を目指すためには、そしてひいてはスコアを730点・900点といった「大台」に乗せるためには、言うまでもないことながら、英語力そのものを鍛えていく必要があります。

脱「学校英語」

 その際に足枷となってしまうのが、学校教育によって叩き込まれてしまった英語学習に対する誤った姿勢です。従来の学校英語の最大の問題点は、その翻訳主義にあります。教科書の英文を日本語に訳して、その日本語を理解することで英語を理解したつもりにさせるという教授スタイルが横行してきました。学校英語は「使える英語」を教えないで文法に偏っているという批判をよく耳にしますが、実のところ学校英語は「文法偏重」でさえありません。むしろ「日本語偏重」とでも言うべきでしょう。

 しかし、当然ながら、英語は英語であって、日本語ではありません。全く構造の異なる日本語を通して英語を理解しようとしても、少し複雑な文になると混乱してしまいます。そもそも、いちいち日本語に置き換えていては、到底TOEICのスピードについていくことはできません。

ではどうすればいいのか

 英語は、英語の語順で、英語のまま理解することを目標にしてください。もちろん、それを「目標」にしても、その日からイキナリできるようになるわけではありません。しかし、目標に向けて努力することは出来るはずです。そしてその際は、ムダな努力ではなく、有効な努力をしなければなりません。

 「ムダな努力」とは、たとえば、「TOEIC問題集あさり」をすることです。次から次に新しい練習問題をただひたすら解いては自己採点し、スコアを出すことで満足していませんか? 問題をただ「やりっぱなし」にしてしまっては、試験形式になれるための数回を除いては、いくらやっても得られるのは自己満足だけです。

 では、「有効な努力」とは何か? たとえば、以下に紹介する2つのエクササイズです。

オリジナル例文を作ってみる

 たとえば、「『要求する』という意味の他動詞requireがthat節を目的語に取る場合、そのthat節内の動詞を原形にする」という文法事項を、「公式」として覚え込もうとしても、頭がクラクラしてくるだけです。仮に一時的に暗記することができたとしても、すぐに忘れてしまうか、「いざ」という時に使えなくて悔しい思いをするのがオチです。

 だから、抽象的な文法事項や動詞の語法は、実際の例文を通して、具体的に押さえていく必要があります。授業中に講師が紹介する例文や辞書・参考書にある例文は、このために活用してください。しかし、他人が作った例文を眺めているだけでは、いまいちピンと来ないのではありませんか? 左から入ってきたものが、そのまま右に抜けて行ってしまうことはないですか?

 そんな時は、自分オリジナルの例文を作ってみてください。慣れるまでは、ちょっと大変です。でもそれは、アタマが働いている証拠。与えられたものをただ受動的に丸呑みしようとする場合と違って、脳が英語の仕組みを「消化」しようとしているのです。このような作業を通して、重要なポイントがより鮮やかに実感できるようになるに違いありません。そして、英語を実際に使うためのシステムが養われていくことでしょう。

 和英辞典は不用です。知っている単語だけを使って、何か言ってみてください。

音読

 イキナリ音読しろというのではありません。まずは、面白くかつ難し過ぎない英文を選んで、辞書を引いたり、講師に質問したりして、とりあえず内容は理解できる状態にしてください。その上でそれを声に出して読んでいくのです。

 音にしてみると、英語が英語の語順のまま流れていきます。そして、内容を理解した上で音読するわけだから、いちいち立ち止まったりせず、そのまま読み進めていくことができるでしょう。何度も繰り返し音読してください。かつて私は、一つの英文を20〜30回音読していました。回数を重ねるごとに、日本語がアタマから消えていき、最終的には英語だけで理解できるようになるはずです。

 もちろん、「英語だけで理解できる」とは言っても、それはその英文に限ったことであって、新しい英文を見れば、また一からやり直しです。しかし、この作業を繰り返していけば、次第に英語の語順に慣れていくことでしょう。英語の構造が、理屈としてというよりも、感覚としてカラダにしみ込んでいくのです。それは、日本語の助け(=邪魔)なく英語を英語のまま理解していくためのシステムが、自分の中にできていくということです。いずれは、初めて読む・聞く英文が瞬間的に理解できるようになることも、決して夢ではありません。そしてその時には、TOEICがあまりにも退屈に感じられ、試験中に居眠りしないか心配しなくてはならなくなっているかもしれません。